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やがて碧と凪沙が会う間もなく、夏休みが訪れた。
本当は会いたかったし、積もる感情はあった。いざ話したら意識してしまって、きちんと言いたい事を話せるかどうかも怪しかった。
だからこれで良いのだと、碧は自分に言い聞かせていた。
やがて夏休みが終わり、学校が再開。
碧はそれで、凪沙が夏休みの間に引っ越し、海外に留学したという現実を突きつけられた。
話によると、凪沙は海外にいる両親から『こちらに住まないか。』と、提案をされていたようだった。
行ったが最後、数年は帰ってこないという話だ。
モデルの仕事も一旦休止するらしい。
二年生の間ではそれなりに有名な話だった。
凪沙はギリギリまで留学するかどうか悩んでいたらしいが、急に決意を固めたという話を聞いた。
何も知らないのは、碧だけだった。
何か一言連絡してくれても良かったのに。というのは我ながら傲慢すぎる。
彼女はきっと、何度も話そうとした。
その度に逃げたのは、他でもない碧自身だった。
くすぶるような思いを抱き、碧の高校生活は過ぎていった。
数年後、碧は大学生となった。
住むところは変わらず、近くの大学に通っている。
周囲が大学生生活を謳歌する中、碧は凪沙の事がよぎって、ビックリするほど勉強漬けな日々を過ごしていた。
忘れようとしても、彼女を思い出してしまう。
共に過ごした日々や、共に行った場所。
それらが目に入る度、彼女との思い出が甦ってしまう。
何かに集中していなければ思い出してしまいそうで、そんな日々を送っていたある日。
家の呼び鈴がなった。
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