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「凪沙先輩、昔は言う勇気がなかったんですけど。
ずっと…伝えたい事があったんです。」
凪沙が目を瞬かせた。
「き、聞いてあげなくもないわ。」
「それじゃあ、ずっと…言うのを我慢していたことを言いますね。
…凪沙先輩が好きです。昔から、好きでした。」
昔、短い間だが凪沙と遊んだ時から、この思いはあった。
何年も眠らせ、くすぶらせ、そしてようやく口にする事が出来た気がした。
凪沙の瞳から透明な雫が伝う。
「…私も、好き。碧が好き。
昔から好きだったの。本当に、好きだったんだから…。
きっと…ずっと昔から、君のこの言葉を待っていた気がする。」
「俺もずっと言いたかったので、お互い様ですね?」
数年の時を経て思いが通じ合った碧と凪沙は、心から幸せの笑みを溢していた。
「ところで、この町に戻ってきた先輩は、これからあの豪邸でまた暮らすんですか?」
凪沙は小悪魔のような微笑みを浮かべていた。
「私も最初はそうしようかと思っていたけど、いつまでも親に頼るわけにもいかないじゃない?
大家さんに碧はまだいるのか聞きたくて連絡したら、このアパート、一部屋空いてるとついでに話を聞いたの。」
嫌な予感、いやあるいは逆か。
固まる碧を前に、凪沙は不敵に笑っていた。
「それで今決めたわ。私もこの住めば都だというアパートに引っ越そうってね。」
「わざわざ借りなくても、一緒に住んでも良いんですよ?」
「だ、段階を踏むと言う概念がないのっ!?碧は獣ね。」
「酷い言い様ですね。まあ、今はそれでも良いですよ。…段階を踏めば良いんですもんね?」
「碧が可愛くなくなってるわ…!!元から可愛げないけど。」
「凪沙先輩は、ますます綺麗になりましたね。」
「近いのよッ、おバカ!その生意気なところから、一から直してあげないといけないかしら…?」
凪沙の雰囲気が代わり、主導権を握ろうとしていた碧は、思わず怯んでいた。
「冗談ですよ…?」
「あら、私も冗談よ?」
冗談だと言う割に、凪沙の目は笑ってなかった。
帰ってきた彼女の襲来と共に、青春も思い出もなく終わりそうだった碧の大学生活は、波乱の予感がしていた。
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