渚は青の面影を追う。

2/10
前へ
/10ページ
次へ
 数日後、移動教室の際に(あお)が廊下を歩いていた時の事。 目的の教室に向かう為、上級学年の教室を通り過ぎた時だった。  ふと『二年A組』と書かれた教室から出てくる女子生徒は、数日前に海で見た『彼女』だった。  「あ…」  「あ、あの時の!先輩だったのか…じゃなくて、先輩だったんですね!俺は紺野(あお)です。先輩は…」  まさか同じ高校に通っていると思わなかった。 何なら彼女は大学生でもおかしくないとすら思っていた。  彼女の大きなガラス玉みたいに綺麗な瞳と目が合った直後だった。  彼女はツン、と(あお)から目をそらし、さっさと歩き出してしまった。  「ちょ…っ、あ、あの…!」  「…君の事なんて知らない。」  そう素っ気なく言って颯爽(さっそう)と居なくなる彼女。 なぜかはわからないが、耳は真っ赤だった。  「何なんだ…?」  一枚の絵のように美しい神秘的な彼女は、酷くミステリアスだった。 素っ気なくされたが、妙に引っかかる。  「よう、一年生。お前も振られたか。」  振り返るといたのは二年生の教室から出てきた男子生徒。  「先輩…『お前も』と言うことは、彼女は誰に対してもあんな感じなんですか?」  「彼女は瑞原凪沙(みずはらなぎさ)。雑誌のモデルをやってるから、学校で知らねぇ奴はいないぜ。」  「モデル…。」  確かにスッキリとした目鼻立ちや長い手足、白い肌は、モデルと言われてもおかしくはなかった。  「けど、瑞原さんはクールビューティーで近寄りがたいからな~。すっげー美人だけど、高嶺の花って感じだ。」  「そうそう。ぶっちゃけ…浮いてるよね。 愛想無いし、学校も仕事を理由に休む事もあるし。」 出てきた二年生の女子生徒もそんな事を口走る。  「…なるほど。ありがとうございました。」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加