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その日をきっかけに、碧は先輩である凪沙と交流を持つようになった。
休憩時間やお昼の時間、放課後など。
どうしてか凪沙とはよく話が合った。
クールビューティーだと言われている彼女は、話すとちっともクールではなかった。
少年マンガが好きだったりと、案外子供っぽかった。
ある日の帰り道、碧と凪沙は歩いていた。
「…ふぅん、紺野は近くの安アパートに住んでるのね。」
「ええ、ここから見えますかね。あそこのボロアパートです。
音は響きますけど、住めば都ですよ。
微妙に穴が空いてるのか、小さい蜘蛛が入ってくるのが難点ですが。」
「蜘蛛…!?虫は嫌いよ。虫は見つけ次第、全て潰してるの。特に、黒くてカサカサ動くGのイニシャルがついた奴は絶対ね。」
怖いや苦手、はよくわかる。
しかしこれだけ殺意が高い女子を、碧は初めて見た。
碧を見透かして、凪沙は意地の悪い微笑みを浮かべていた。
「もしミズハラムシがいたら、潰してしまうかもしれないわね…?」
「なんですか、その虫の名前は。凄い聞き覚えがあるんですけど。」
ふと歩いている内に目に入ったのは、丘の上にある豪邸だった。
碧は思わず目を細める。
「凄いな~あんな豪邸、どんな人が住んでるんだろ…。」
「あれは私の家よ。」
さらりと言われた言葉に目を向けた時、凪沙はまっすぐに碧を見つめていた。
目が合い続けていると心臓に悪い気がして、思わずそらしていた。
「まさか~」
「本当よ。両親は海外で仕事をしていて、一人で住んでるの。」
両親は海外で仕事、あの豪邸に一人暮らし。凪沙は結構なお金持ちらしい。佇まいに品があると思っていた。巨大おにぎりは頬張っていたが。
「なるほど。瑞原先輩はお嬢様なんですね。」
「ええ。そうよ。少しは私を敬いなさい。
家が汚れているから今日は無理だけど、今度、呼んであげても良いけど。」
「い、いいんですか!?」
どうしてこんなに浮かれているのか、碧は自分でもよくわからなかった。
碧の浮かれ具合に、なぜか凪沙が顔を赤くした。
「言っとくけど、他意はないわよ!?」
「あ、当たり前ですよ!?俺だってありません!!」
凪沙につられて、碧まで顔を赤くしていた。
お互いに何だか気まずくなって、その日は適当に理由をつけて別れていた。
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