日常だけの映画

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日常だけの映画

 頭の中は混乱していく。すでに一時間近く経っている。それなのに映画はたんたんと進んでいく。  ──あの『呪いの家』はなんだったの?──  確かにあれは要所要所に出てくる。しかし通り過ぎるだけだ。主人公たちの通る道にあれをただ通り過ぎる。何も起こらない。これではホラー映画の意味がない。  ──私は何を見せられてるの?──  主人公の日常が繰り返され、そして平凡な生活が映し出される。肩透かしを食らわされる。そして──   エンドロールが流れる。 「何これ? ハルナ──えっ!?」  一種の驚きを持ってカナはハルナを見る。  ハルナはカタカタ震えていた。ハルナだけではないこの映画を見た人間が一様に震えているのだ。 「どうしたの? ハルナ」 「…………」  ハルナは返事もしない。そして照明が場内を照らす。何事もなかったように周りは席を立つ。みな無表情だ。ハルナも立ち上がった。カナも後を追うように立とうとしたがなぜか金縛りにあったように立てない。足だけがどうしても動かないのだ。ハルナはそのままカナを見ることも振り向くこともせず、会場をそのまま去っていった。
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