第一章 空港での再会

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「ありがとう。私でよければ」  だから素直に答える。彼は別の世界の人だと思っていたし、話すのも話題を探して緊張した。正直、今も鼓動が速い。  でも嫌な感じはしなくて、短い会話の中で私も本音で話せたのは事実だ。  ここでどちらかの家に行こうと言われたら、きっと警戒してやっぱり帰るとなったかもしれない。でも彼が提案したのは近くの公園のベンチだった。  自動販売機でペットボトルのお茶を買って、ふたり並んで他愛ない話を始める。夏の夜空を見上げて、時折空の話をして気づけば時間はあっという間に過ぎた。  日付が変わる寸前で、彼が時計を見遣りアパートの近くまで送ってもらう流れになる。別れる間際に連絡先を交換して、お開きとなった。 「今日はありがとう。集まりに行ってよかったよ。山口さんに会えたから」 「こちらこそ、進藤くんとたくさん話せて楽しかった。ありがとう、おやすみなさい」  また連絡するとは言わないし、する気もなかった。彼もそうだろう。偶然の巡り合わせで、思いのほか楽しい時間を過ごせた。彼もそうだったら嬉しい。  ところが、わりと早いタイミングで彼から連絡があり、私たちは再び会うことになった。気になっていたお店に食事に行ったり、なにげない会話の中で話題になった映画を一緒に見に行ったり。気づけば何度もふたりで会っていた。  誘われて予定が空いていたら素直に応じたものの、進藤くんは私と一緒で楽しいのだろうかと何度も疑問を抱いた。おもいきって尋ねてみると『楽しくなかったら誘わないよ』と言われ、嬉しいような気恥ずかしい気持ちになる。
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