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第一章 空港での再会
「わっ! 凌空、大変! 飛行機、欠航だって」
突然フライト一時間前に機材トラブルで欠航を言い渡され、私は呆然とするしかなかった。時間に余裕を持とうと保安検査場を通過し、飛行機のよく見える搭乗口近くで待機していたのに、まさかの事態だ。
お盆の時期ははずれているとはいえ、八月初旬の空港は人が多く、今日の飛行機もほぼ満席だったと記憶している。周りはざわつき、急に慌ただしくなった。
どこかに電話をかける人、文句を言い出す人。グランドスタッフが大きな声で欠航を知らせ、チケットの払い戻しや代替便の案内などをしている。
「けっこん?」
二ヶ月後には三歳が見えてきた息子が不思議そうな顔をする。私にとっては欠航になった事実より、それを彼に伝える方がよっぽどおそろしい。しかし言わないわけにはいかない。
一度唾液を飲み込み、わざとらしく笑顔を作った。
「あのね、乗るはずだった飛行機が飛ばないんだって。だから今日は飛行機に乗れないみたい」
言うや否や彼の顔はくしゃりと歪んだ。
「えーーー。やだーーー。りく、ひこうきのるーー」
あまりにも予想通りの反応に頭を抱えたくなる。
うん、わかっていた。凌空は誰よりも飛行機に乗るのを楽しみにしていたから。
ましてや正面のガラス張り壁の向こうには、大きな飛行機が並んでいるのだ。
でもしょうがない。人生は思い通りにいかないことの連続だ。
「凌空、今日は乗れないけれど、また今度乗ろう。ねっ」
「やだ! ひこうき、のるーーー!」
そんな理屈、伝わるわけがないのはわかっている。さらには場所も状況もおかまいなしに叫ぶ。それが二歳児だ。
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