10 第三関門

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10 第三関門

「これは小鈴様、急に訪問致しまして申し訳ない。」 「いいえ。 あの、何か私にご用で?」 私は答えた。 「単刀直入に申し上げる。 あなたが飛龍様のお気に入りの姫ですね?」 「いえ… そんな事は無いと思います。 先日キッパリと振られましてございます。」 私は言った。 「いいえ、あなたですよ。 飛龍様はこうおっしゃいました。 『小鈴がもしも朱雀の姫でなくても後宮に留めることは可能か?』と。」 「えっ…? 飛龍様がそのようなことを…?」 「自信をお持ち下さい。 あなたなら、飛龍様の呪縛を解ける…やもしれません。」 「そうでしょうか…? 私には自信などは…」 「それと、もう一つ確認したき事がございます。」 「何でしょうか?」 私は尋ねた。 「もしも、小鈴様が朱雀の姫では無かった場合… 後宮に留まるのは一向に構いません。 しかし、飛龍様は国のために朱雀の姫様と正式にご結婚されます。 それを見届ける覚悟はおありか? 陰で支える事はできますか?」 春蕾様がおっしゃる。 「私は飛龍様に恋に落ちたとき、どのような境遇でも彼を愛し抜くと決めました。」 私は春蕾様の目を見てそう言った。 「あなたにとっては愚問でしたね。 その言葉を信じます。 明日の第三関門頑張って下さい。」 そうして、春蕾様は去って行った。 ♦︎♦︎♦︎ 翌日、第三関門が始まった。 それは、今までとは少し違い、飛龍様のお母様、つまり高貴妃様との面談だった。 一体何を喋ったらいいのかしら? そう思いながら、私の番がやって来た。 「失礼致します。 小鈴でございます。」 「入れ。」 威厳のある声がそう言った。 「そなたが小鈴か…」 「はい、お初にお目にかかります。 どうぞ、よろしくおね…」 そう言いかけたとき、高貴妃は言った。 「雹華は繊細な雪の結晶のようなおなごじゃった。 そなたは雑草のようじゃな!」 え…? 雑草って言われた!? 私は面食らった。 「はぁ… あの…」 「図太く、果たして正妃としてふさわしいか… 最後に何か言いたい事はあるか?」 「高貴妃様も雑草かと思われます…!」 私は言った。 「なにを! 私が雑草じゃと申すか!」 「私は… 確かに雪の結晶のように繊細ではありません。 雑草のように地に根を張り、踏まれても踏まれても立ち上がる事でしょう。 高貴妃様もそうやって飛龍様を守ってこられた。 私も喜んで草となり、飛龍様を守り続ける事でしょう。 言いたい事はそれだけにございます。」 「ふん! 生意気な! …下がれ。」 そうして、第三関門は終わった。 もちろん、この関門で、合格者、不合格者はいない。
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