7 その夜も

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7 その夜も

side飛龍 その夜も、俺は彼女を待っていた。 自分でも不思議だった。 なぜ、彼女を待つのか…? ただ、もっと彼女と仲良くなって、色々な話がしたいと、そう思った。 小鈴… 薄桃色の瞳は蓮の花のようで、俺は彼女の部屋を瞳と同じく薄桃色にするように指示した。 ビー玉のような瞳は美しく、全てを見透かしてなお、輝いているようだった。 彼女は、俺の月の花の曲に月の光という歌を返した。 俺はやっと誰かに慰められた気がしたんだ。 そして、月の光を弾いていると、小鈴がやって来た。 「飛龍様…」 「小鈴…」 俺たちはしばらく見つめあった。 その後、小鈴は意外な言葉を口にした。 「お願いしたいことがあって参りました…」 「なんだ? 遠慮なく申せ。 昨日の歌の礼がしたいと思って居た所よ。 俺に出来る事ならば何でもしよう。」 「本当にございますか…!?」 「二言はない。」 俺は言った。 しかし… 「お願いとは、刺青を入れ牢屋に連れて行かれた朱雀の姫候補の事にございます…」 「なに…?」 俺はわずかに眉を顰める。 「彼女達は処刑されると聞きました。 何卒、命までは取らぬようお願いしたいのです!」 「それは… そなたの願いであっても、ならぬな… 皇帝の俺を騙そうとした罪は重い。 処刑が妥当であろう。」 「そこをなんとか! お願いいたしまする!」 「できぬと言っておろう!」 「何でも叶えてくださるとおっしゃいました!」 「それ以外で申せ!」 「それ以外の願いなど、ありません。 何卒…」 「えぇい! 興が削がれた! 帰る!」 「飛龍様…っ!」 彼女の声も聞かずに俺は本城へ帰った。 政務室に向かうと、書類の山があった。 むしゃくしゃしながらそれを片付けていると、宰相の春蕾がやって来た。 「…なぁ?春蕾よ。」 「何でございましょう?」 「今日の第一関門で刺青を入れておった3人を禁錮3年の刑にしようと思うのだが… どうだ?」 「はっ? 熱でもあられるのですか? 死刑でなくば、皇帝陛下の威厳にも関わるかと存じますが… と、あなたなら同じ考えかと…てっきり…」 「いや、少しは寛大な所を見せるのも良いかも知れぬと、思ってな。」 「はぁ… 皇帝陛下の飛龍様がそうおっしゃるのでしたら… 私は別に反対は致しません。」 「そ、そうか。 ならば、そのようにしてくれ。」 俺は言い、書類の山に戻った。 我ながら甘い判断だった。 だが、しかし、これで小鈴は俺に惚れる…かも…? 何となくそう思ってニヤける自分が居た。 春蕾は首を捻りながら、政務室を後にしたのだった。
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