act.1

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ライブ中のほんのわずかな休憩時間に修哉は舞台裏で有羽(ゆう)に声をかける。 「少し飛ばしすぎじゃないか?」 周りをメイクやスタイリスト、ライブスタッフに囲まれ、タオルで汗を拭い、スポーツドリンクを飲みながら有羽が笑う。 「ここで飛ばさないでいつ飛ばすんだよ?夢にまで見た憧れの舞台に立ってるっていうのに」 ふたりを休ませ、衣装をチェンジさせるため、ステージではバンドメンバーがインストルメンタルの曲を演奏している。 修哉がこの日のために特別に作った曲だ。 「身体、平気か?」 「え⁈何て?」 ステージからの大音量に邪魔されて修哉の低音が聞き取れず、有羽が聞き返す。 「身体は大丈夫か?」 修哉が声を張って繰り返すと、有羽は笑顔を見せた。 「平気もなにも、絶好調だよ。おまえには俺が調子悪そうに見えんの?」 「……いや、そういうわけじゃないが」 修哉が口ごもると有羽は柔らかく笑った。 「俺、いま最高に幸せ」 「ならいい」 「修、おまえは?」 有羽に訊かれて修哉もまた柔らかい微笑とともに答えた。 「俺も最高に幸せだ」 そこでステージから聴こえてくる曲調が変わり、ふたりの出番が近づいてきた。 「行こう修」 「ああ」 ふたりは最後にもう1度タオルで汗を拭い、水を一口飲んでからステージに向かって暗い通路を歩いていく。 光が差す方へとーーーー。
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