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「エリカ、俺」
修哉が眠っている隙に有羽はエリカに電話をかけた。
『有羽⁈声が戻ったの⁈』
電話口のエリカはスイートルームで豪遊中の兵護と遠藤に聞こえないように声を潜めながらも驚きを隠せずに言った。
「……うん。おかげさまで」
修哉を起こさないように有羽もまた小声で囁いた。
リビングの窓辺に立ち、自分の背丈より大きなクリスマスツリーを見つめ、さらに声を潜めて有羽は続けた。
「エリカの言ったとおりだった」
『え?』
「……修が」
『修哉が何?』
「最高にデレて……手に負えな……」
そこでスマホにノイズが入り、有羽の声が途切れた。
『有羽?もしもし?どうしたの?何か……』
「有羽はまだ完全には喋れてない。社長にもまだしばらく時間がかかると言うつもりだから、邪魔するな」
有羽からスマホを奪い取った修哉はそれだけ言うと通話を切ってしまう。
『邪魔って……ちょっと……修哉!』
エリカは一方的に通話を切られ、スマホを見つめてため息をつき、その後ニヤリと意地悪く笑った。
「……修」
有羽は修哉にスマホを取り上げられ、クリスマスツリーの前に追い込まれてしまう。
「目が覚めたらおまえがいないから」
「うん。エリカにだけは連絡……わッ」
話している途中で有羽は修哉に軽々と抱き上げられてしまう。
「ちょっ……修」
修哉は有羽を抱いたまま真っ直ぐベッドルームに戻る。
「今の、聞いただろう。おまえはまだ完全には喋れてない」
「……ええと、だいぶ喋れてると思う、けど」
有羽がそう言うと修哉は軽く有羽を睨んだ。
「おまえにはまだ休養が必要だ。だから……」
修哉は有羽の身体をベッドにそっと横たえると、鼻先が触れ合いそうなほど顔を近づけて低く甘く囁いた。
「ここにいろ。俺の腕の中に」
切れ長の瞳に熱く見つめられ、ゆっくりとキスされて有羽は頭がボーッなる。
「わかったか?」
有羽は男らしく優しいその眼差しにクラクラしながらただただ頷くことしかできない。
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