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act.6
その日はルームサービスの食事以外は1日中キスしたり抱き合ったりして過ごした。
というより修哉が有羽を離さなかった。
明日の仕事のことや時間を気にせず好きなだけゆっくり休むなんて3年ぶりのことだった。
修哉は自分のスマホはもちろん、有羽のスマホの電源も切ってしまった。
ベッドやソファ、窓辺の椅子、色々な場所で抱き合った。
「……あっ……あ……修……」
有羽の身体を気遣って最後までしたのは朝の1回だけだったが、修哉はあの手この手で有羽を抱いた。
「待って……あ!……また……やっ……」
有羽は修哉の腕の中で何度目かの絶頂に達して果てた。
「修……もう……もうやだ……」
修哉は自分の腕の中で快感に震える有羽の額に優しく口づける。
「……やだって……言ってるのに……」
窓辺に寄せた椅子に座る修哉の腕の中で乱された有羽は綺麗な瞳から涙を溢しながら訴えた。
「……ごめん。おまえが可愛いから」
「ごめん、ごめんって……口ばっかりで全然……俺の言うこと聞かないで……」
有羽はそう言って修哉を睨む。
修哉にとってそれは逆効果でしかないのだが、有羽にはまだ恋人同士の甘い駆け引きや、際限なく求め合う気持ちがわからない。
有羽の中では1日に何度もそういうことをするのはいけない事だという気持ちがあるからだ。
「有羽?」
修哉がキスしようとすると有羽はふいと顔を背けた。
「俺が修のこと好き好き言うからって……何しても怒らないと思ったら大間違いなんだからな」
修哉が自分のそういう言動を何よりたまらなく可愛いと思っていることを、有羽はまだ知らない。
「……わかった。おまえの言うことをきく」
修哉が両手を上げて真面目な顔でそう言うと、有羽は満足そうに頷いた。
「わかればいい」
「で、おまえの望みは?」
「蕾、歌って」
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