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修哉は部屋の電気を消してクリスマスツリーのライトと月明かりだけを頼りにギターを弾き、有羽を想って作った曲『蕾』を歌った。
修哉のすぐ目の前に向かい合う形で椅子に座り、有羽はうっとりしながら聴き惚れる。
咲いても咲かなくても
君が僕のすべて
君が僕のすべて
そのままの君を愛してる
そのままの君をただ愛してる
修哉は有羽のことを真っ直ぐ見つめながら、YouTubeにあげた動画の時よりもずっと甘く優しい声で歌った。
もともと胸を締めつけるほどに切ないメロディの曲だったが、こうして目の前で生で聴くとその旋律は泣きたくなるほど甘く切なく響いて有羽の心を揺さぶった。
あんなに苦しかったのが嘘のように幸せな気持ちで有羽はそれを聴いた。
修哉は歌い終えると椅子の上にギターを置き、有羽に歩み寄る。
そして有羽の前で膝をつき、その頬を濡らす涙を長い指でそっと拭った。
有羽は修哉のどこまでも優しい眼差しに見つめられ、胸が苦しくなる。
「修……」
「ん?」
「俺の言うこと、きいてくれる?」
有羽は自分の前に膝をついて座っている修哉の肩にそっと手を置く。
「おまえが望むなら何だって叶えてやる」
「……修哉が欲しい」
しんと静かな冬の夜に消え入りそうなほど小さな声で有羽が囁き、恥じらいながら俯くと、修哉は優しく微笑んで有羽を抱き上げた。
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