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翌日はふたりでクリスマスマーケットを訪れた。
大きな公園の通りの両側にクリスマスの飾りや食べ物の屋台が並び、移動遊園地の観覧車も見える。
「修!修哉!あれって本物⁈乗れるのか⁈」
有羽は奥に見える観覧車を指さして目を輝かせた。
「ああ、乗れるよ。後で乗ろう」
「後っていつ?いま乗りたい!」
修哉のコートの袖を引っ張る有羽は小さな子どものようだ。
15年ものあいだ外の世界と断絶した暮らしをしていた有羽には普通の子どもなら誰でもしてきたはずの経験が一切ない。
学校にも行かず、友達もいなかったのだから当然だ。
伯父として金森が連れ出そうと試みたこともあったが、当時の有羽にしてみれば外は恐怖でしかなかった。
修哉と出会い、CHRYSALISのボーカル有羽として活動するようになってからは飛躍的に成長し、外の世界にも触れたが、それはあくまでも「仕事」
としてだった。
すべてが決められたスケジュールによるものであり、そこにどれだけの体験や経験、他者との触れ合いがあったとしても、それは有羽が自ら望んだことではないし、選んだことでもない。
それでも、金森も修哉も何もないよりはいいと思って突っ走ってきた3年間だった。
「やっばい!なにこの景色!」
観覧車から見下ろすパリの街並みと、眼下のクリスマスマーケットの色鮮やかな光景に有羽は大興奮した。
「空が近い!」
無邪気にはしゃぐ有羽を見て修哉は目を細めた。
「有羽」
修哉の静かな声と慈しむような眼差しに、振り返った有羽は息を呑む。
「おまえのおかげで俺の夢が叶ったから、これからはおまえがやりたいこと、見たいものをひとつずつ叶えていこうな」
「……修」
「今までたくさん、無理させてごめんな」
どこまでも優しく深い眼差しと静かなその口調に、有羽はたまらなくなって修哉に抱きついた。
「……なんでそんな風に自分を責めるんだよ!俺は……無理なんかしてない。俺は修のおかげで外に出られたのに……」
「……有羽」
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