act.6

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胸に飛び込んできた細い身体を受け止めて修哉は有羽の髪に頬を寄せた。 「日本中を飛び回ったことも、世界中を飛び回ったことも、修と出会わなかったら一生出来なかったことだ。出会った人全部、訪れた場所すべてが修からの贈り物なんだよ!」 有羽は両手で修哉の頬を包み込み、瞳を合わせて囁いた。 「何もなかった俺に、全部全部、修がくれたんだよ。この3年間に見たものも経験したこたことも全部が俺の宝物なんだ。無理なんかしてない。だから……謝ったりするなよ」 どこまでも澄んだ琥珀色の瞳で真っ直ぐに見つめてくる有羽に修哉は胸を打たれる。 初めて会ったあの日のように。 自分なんかが触れたら有羽の真っさらな美しさが失われてしまうと思っていた。 無垢な心、綺麗な魂を汚してしまうと。 それは大きな間違いだったと、この瞬間、修哉は気づかされた。 そんなことで有羽は汚れたりしない。 変わったりはしない。 長年閉じこもっていたから綺麗なわけじゃない。 有羽が持つこの透き通るような美しさは、彼の本質なのだと。 「もう、なんでそんな過保護で心配性なの、おまえは」 ドームで倒れた日と同じことを言われ、修哉は苦笑した。 「それは……おまえのことを愛してるからだろうな」 「…………」 「ん?」 「修って……」 「なんだ」 有羽はとてつもなくむず痒い気持ちになって修哉の頬を包み込み込んでいた手を離し、合わせていた視線も逸らす。 「……ムッツリすけべ」 「は⁈」 修哉は有羽のひと言に憤慨し、素っ頓狂な声を出す。 「誰がムッツリ……おい、有羽!どこでそんなセリフ……」 有羽がそっぽを向くと今度は修哉が有羽の頬に手を当て、目を合わせようとしたが、有羽は逃げようとする。 「……わかった。エリカだな。おい、こっち見ろ、そして訂正しろ!」 「なんで?だってホントのことだろ。ほんの少し前まではいつでも涼しい顔して俺のことをかわしてたくせに」 「……それは」 修哉が返事に困って手を離そうとすると、一瞬の隙をついて有羽の方から口づけた。 「嘘だよバカ。俺だって愛してるよ!」
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