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未だに状況が掴めずに呆然としているアタシを保健室のベッドに座らせて、佐渡先輩が保険医の美和ちゃんに簡潔に状況を説明した。
「おお。なかなかロマンチックな状況じゃないか、折宮を取り合って、剣道部イケメン男子が対立なんてさ」
ニヤニヤしながら美和ちゃんが言うけど。
それを聞いてアタシは悲しくなった。
「いや、柄じゃないから、アタシ」
「柄じゃないからと逃げるのって、相手に失礼じゃなーい?」
軽く言う美和ちゃんを少しだけ睨む。
「別に、二人に告白された訳じゃないし」
アタシの言葉に美和ちゃんは、佐渡先輩を振り返った。
「あの状況でまだこんな事言ってるの、信じられる?」
「折宮は人には正当な評価ができる子ですが、自分となると途端に自信をなくします」
佐渡先輩の言葉を受けて、美和ちゃんがため息をついた。
「人の好みはそれぞれなんだけどね。特に日本は女性に厳しいよね。男より低身長であれ、男より低学歴であれ、男より低収入であれ、つまりは男に従順であれ、ってことなのよ。まぁ、日本の男性全員がそう思ってる訳ではないだろうけど。そう思ってる男が多いのも事実でね」
佐渡先輩も大きく息をついて言う。
「それに似たことを、鹿島が折宮に言っているのを聞きました。私はこれを無かったことにするつもりはありません。例え照れ隠しであろうと、嫉妬であろうと、言うべきでない言葉を発した鹿島は折宮に謝るべきです。これから私は鹿島に話に行こうと思っています。同じ剣道部部長として」
佐渡先輩はそう言うと保健室を出ていった
美和ちゃんは残ったアタシに優しく言う。
「と、まぁ。こんな憤りもあるけどさ。実際のところ、守られたいって願望があったりしない? 私はあるなぁ。強い戦士とか騎士に守られたい、みたいなお姫さま願望。あ、年なのにって笑わないでよ、年とか見た目とか関係ないんだから」
美和ちゃんがベッドに近寄ってきて、アタシの隣に座った。
「折宮も後輩たちの希望を受けて、男性っぽく振る舞うのも悪くはないけど。女の子っぽくすることを隠すことはないんじゃない? 女の子っぽいのが好きならね。柄じゃないとか言わずにさ。あなたを女の子として見てるヤツだっているんだから」
そう言って美和ちゃんは、アタシの背を優しくポンポンと叩いた。
「これは内緒のハナシね。健康診断前、石井が真剣な顔して聞きに来たわよ。『身長を早急に伸ばすにはどうしたらいいか』って。誰かさんが、恋人は自分よりも背が高い人だと言っているのを聞いたから、らしいんだけどね」
ウフフといたずらっぽく笑って、アタシの顔を覗き込む。
「いつも、自分に素直でいること。堂々としていること。折宮には恥ずかしいことなど何もないんだから」
美和ちゃんの言葉にアタシは大きく頷いた。
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