VII

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*  喫茶店に居た美晴はまたデート後なのかブランドものの小花柄のワンピースを着ていた。バッグや小物からも金の掛かりそうな女だと思う。 「矢上......その顔、どうしたの?」 「聞くな」 「矢上のおばさんにきこーっと」 「この歳になってなんでも母親に話してる馬鹿が居るか」  この後、別れたことを説明するのが死ぬほどダルいが。 「どうしたんだよ」 「別に。元気かなって」  コイツがそんな殊勝なことを言う訳がない。現に今も若干落ち込んでいる。 「愚痴なら、聞くけど」 「……皆私のこと否定するんだ。料理がうまいわけじゃない。家事が出来るわけじゃないって。ご趣味は? マチアプで週末は全部デートですけど? みたいな」  美晴はこの一年、婚活を頑張っていたらしい。 「こんな辛い思いしてまで結婚なんてする必要、あるのかなって」 「猪塚には猪塚の良いところがある」 「そんなの、責任取れる奴しか言っちゃ駄目な奴でしょ」  責任。女は皆そうだ。  友梨にも散々言われた。取れる訳がない。他人の人生なんだから。 「結婚の意義なんて俺だってわかんねぇよ。女に値踏みされるために今までの人生を積み上げて来たわけじゃない。でも、結婚しないと一人前じゃないみたいに扱われんの、まじで鬱」 (あぁ、だからこそ好きなやつと結婚するのか。せめて好きなやつのためなら耐えられるかもしれない) 「猪塚、今でも身長は180cmないと駄目か?」  美晴は首を振る。 「そんな都合の良い人、居ないんだもん」 (もしかしたら、俺はこいつと人生を歩んでみても良いかもしれない)
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