IX

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 すぐ近くで小さい子がおままごとキットを持って親と遊んでいた。 「矢上の家でさ、よくおままごとしたよね。懐かしい」  矢上はあの頃本当にチビでビビりで私の舎弟のような存在だった。でも、私の我儘に最後まで付き合ってくれるのも矢上だった。 「”お嫁さんになってください”」 「!」 「ってよく言わされたな。......猪塚?」 「〜〜ッ!」  今のは、一体。  一瞬、心臓が止まるかと思った。 「あ、悪い。電話だ」  ふと見えた電話の相手は”友梨”。確か、矢上の元カノがそういう名前だった。 「私、帰る!」
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