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「育休中でござる。マイベビーを見るでござるかー?」 (イケメンじゃん!) 「私、この子と結婚する」 「はっは〜。猪塚殿はジョークも一級でござるな〜。矢上氏と猪塚殿の娘であれば或いはでござるが」  高梁の私を貶さないところ、わりと好感が持てる。いや、待って。 「? なんでそこで矢上が出てくるの」 「? 矢上氏は人生の大半で猪塚殿のことが好きでござろう?」 「!」  私は駆け出す。 (なんでアイツ、そんな大事なこと言ってくれないの!)  思えば、私が身長180cmのくだりを言い始めたのは、矢上がモテ始めた頃だったと思う。”矢上なんて全然気にしてない”そんなスタンスを貫くために言い始めた物語が、いつしか私の信条になった。 (馬鹿)  私達は意地の張り合いをしていたのかもしれない。 *  私が居なくなった後、高梁がこう呟いていたのは聞こえなかった。 「まぁ、こうでも言わないと延々とくっつきそうにないからなぁ」
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