II

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* 「猪塚殿は誠に可愛らしい。半日だけでも隣を歩けたことを嬉しく思いますぞ」 「あ......はは。ソウデスカー」  おしゃれなイタリアンに二人で行って、映画館で話題の青春ラブコメ映画を観る。喫茶店で感想を話してっていう、ちゃんとしたデートコースに文句はない。むしろメニューのチョイスや話題の振り方なんかは過去一良かった。 「流石、矢上氏がよく話題にしているだけのことはありまする。かように愛らしい幼馴染が居れば人生薔薇色、有頂天ですな」 (いや、いやいやいや喋り方さぁ!)  矢上の友人、ちょっとおかしいと思う。条件に合うって、確かに身長は自販機に届きそうなくらい高いし、経歴は△△大学だから頭良いんだろうけど。  明らかに、クセが強い。 (はっ! 顔がイケメンじゃなかったら矢上に条件にあってないって言えるじゃん!?) 「ちょっと、眼鏡取ってもらっても良い?」 「むむっ、こうですかな〜?」  高梁が眼鏡を取ると、少女漫画のようなバサバサのまつ毛の美形が現れた。 (た、確かにイケメン! ってかだったら、なんでこんなクソダサ眼鏡してんのよ!)  背後に背負っているのは間違いなく薔薇だ。 (いやいや、でも! 仕事の都合上とか色んな理由があるよね!) 「そういえば何のお仕事してるんだっけ」  高梁はさもなんでもないことのようにこう言った。 「仕事? あぁ、今は無職ですぞ」
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