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IV
ーSide 猪塚美晴(29)
帰り道。道端でベビーカーからのびてきた子供の靴が一張羅に当たった。真っ白で繊細なレースに泥が着く。
「あっ、ごめんなさい」
「何して......ーーっ!」
子持ちとか伴侶持ちに嫌味を言う厄介なオバサンには絶対になるもんかと若い頃は思っていたのに。自分が実は誰からも大事にされるに値しない存在なのもしれないと怯え出してから、私は思わず余計な一言を言ってしまいそうになる。
“子供が居るからって調子に乗らないでよ”
“恋人すら居ない私に何の嫌味なの?”
そんなの、見ず知らずの人に言うべきではないことは理性ではわかっている。
(......。)
最悪。
こんな性格だから私には一向に王子様が現れない。
親子連れは突然泣き出した私を見て訝しみながらも先に進んで行った。
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