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V
ーーSide 矢上勇登
同棲している彼女、友梨の居るアパートに帰ったのは20時過ぎだった。
「誰と会ってたんだっけ?」
「猪塚だよ」
「あぁ、猪塚君ね」
わざわざ誤解を解こうとも思わなくなったのはいつからだっただろうか。彼女は俺の交友関係に興味はない。俺は生活費を他の奴よりも幾分かマトモに運んでくれそうであるという理由で選ばれただけだ。
身長171cm、地元でギリ頭が良い枠に入るだけの学歴、フツメンの俺と付き合ってくれるだけ、ありがたいと思わなければ。
「今日、織部くんから結婚式の招待状が届いてたよ」
恋愛のレも字もなかった同期の結婚。もうすぐ30だから、どこもそんなものだろう。
「そろそろ私達もーー」
「あ、悪い。煙草切らしてたから買ってくる」
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