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VI
ーSide 猪塚美晴(30)
一年後。30歳になった私は相変わらず婚活をしていた。矢上の件で私は悟った。自然な恋愛や紹介ではもう無理なのだと。
マチアプ戦士、私。
今日も一戦交えます!
「田舎に実家があって、一人っ子なので将来は介護とかあるかもしれませんね」
「は、ハァ」
(プロフにはそんなこと書いてなかったじゃない!)
「猪塚さんは、お料理は勉強中、ですか。ちなみに得意料理は?」
「え、海鮮丼です」
「へぇ〜。お魚捌けるの凄いですね」
「買ったもの載せるだけですけど?」
「......。」
「......。」
マチアプのデートに情はなく、ひたすらより良い条件の相手を見つけると思って流すか、妥協するかをひたすら繰り返していく。でも、どうやら私には選択権はないらしい。
「今回はご縁がなかったということで。僕はこれで。ゆっくりされていってください」
ホテル1Fのカフェで私は何度目かの”ごゆっくり”を言い渡されていた。当然、次回の約束なんかない。
(こんなに良いカフェで、泣くな〜! 私〜!)
紙ナプキンで盛大に鼻水を啜っているところで、忘れられない口調の声がした。
「おっ、猪塚殿ではないですか〜」
「この声は高梁右京!」
「フルネーム呼び捨てはご勘弁でござる」
頭を上げると、ホスト顔負けのイケメンが立っていた。
「誰!?」
「高梁右京でござる」
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