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ーSide 猪塚美晴(30)  一年後。30歳になった私は相変わらず婚活をしていた。矢上の件で私は悟った。自然な恋愛や紹介ではもう無理なのだと。  マチアプ戦士、私。  今日も一戦交えます! 「田舎に実家があって、一人っ子なので将来は介護とかあるかもしれませんね」 「は、ハァ」 (プロフにはそんなこと書いてなかったじゃない!) 「猪塚さんは、お料理は勉強中、ですか。ちなみに得意料理は?」 「え、海鮮丼です」 「へぇ〜。お魚捌けるの凄いですね」 「買ったもの載せるだけですけど?」 「......。」 「......。」  マチアプのデートに情はなく、ひたすらより良い条件の相手を見つけると思って流すか、妥協するかをひたすら繰り返していく。でも、どうやら私には選択権はないらしい。 「今回はご縁がなかったということで。僕はこれで。ゆっくりされていってください」  ホテル1Fのカフェで私は何度目かの”ごゆっくり”を言い渡されていた。当然、次回の約束なんかない。 (こんなに良いカフェで、泣くな〜! 私〜!)  紙ナプキンで盛大に鼻水を啜っているところで、忘れられない口調の声がした。 「おっ、猪塚殿ではないですか〜」 「この声は高梁右京!」 「フルネーム呼び捨てはご勘弁でござる」  頭を上げると、ホスト顔負けのイケメンが立っていた。 「誰!?」 「高梁右京でござる」
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