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「……声けるか」と溜息にも似た呟きは聞こえっこないはずなのに、赤は私に顔を向けた。
「お!」
赤は私に近づき、そして胡散臭い表情を浮かべ、きっとこう言うだろう。
「『こんな所で偶然だな。いやー偶然、偶然』」
はいはい、わかっていますよ、赤。これから……ちがうか、問題をどっかから持ち込んできたんでしょ。
「空蘭。いま暇かい」
「赤、学生に第一声で聞く言葉ではないですよ」
「そうか暇かー」
「……赤。その都合のいい耳どうにかしてもらえませんか?」
「今日は何と!」
「話、聞いてください」
「ははは、今日も落ち着いた返しだね」
赤の無駄に高いテンションとは対照的に私は、これ以上災いになるであろう問題をこじらせないように落ち着いて答える。
「明日、お店に行くまで大人しく待っていてください。なにより今は学業の方が大切です」
「学校なんて現代社会で意味も持たない場所に行く意味は有るのかい?」
未来ある若者に向かって、真顔で自分勝手な言い分に私は絶句した。
頭が湧いているのは百も承知だったが、まさかここまで沸騰しきって中身が無くなったのかとさえ本気で思ったが、赤は普段の腑抜けた顔ではなく、真剣な顔になり真っ白な手紙を差し出され不用意に私は手に取ると、赤はこう言った。
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