手紙 #08

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手紙 #08

 次に私が意識が目覚めた時、手足の関節からガムテープで巻かれ壁際に座らされた状態だった。 私は周囲を警戒しながら、うっすらと目を開き周囲を見渡し誰もいない事を確認する。  いったい何が起きたんだろう。いや、もう分かっている。  私は人さらいに捕まってしまった。  あれだけ警戒していたのに、逃げれると油断して背後を不意を突かれ捕まってしまったのだろう。 「はー……」  私は二度目の過ちを犯してしまった。  私のため息に気付いたかのように部屋の襖が開き入ってきたのは佐々木さんだった。  互いの目が合うが、佐々木さんの目の光がなく力なく、ゆっくりと私に近づきながら前に立ち声をかけた。 「声を上げないのね」 「……そんな無駄なことはしませんよ。手足の関節から隙間なくガムテープで固定しているのに、この状況下で口をふさがないなんて、リスクその物なのに、何もしないはこの武家屋敷の作りが表に声が伝わらないと考えるのが普通ですから、叫ばなかったんです」 「あら、恐怖で叫ばないんじゃなくて冷静に分析しての答えだったのね。残念」 「残念……普通でしたら大声で泣き叫んだりしますよね」 「ええ、本当に残念。貴女を店先で見た時からどんな声で泣き喚くか楽しみだったのに」
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