prologue

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 青乃(あおの) (あか)  逆から読んだら”赤の青”と、真逆になる変な名前をした魔術師が居る。  そんな名前について赤は決まって「ふざけた名前だけれど僕は気に入っているんだ」と私に向けて少年のように笑顔を浮かべて言ったのを急に思い出してしまった。  何故そんな思い出を語り出したかと言うと、その青乃赤が私の目の前に現れたからだ。  それも唐突に、脈絡なんて一切お構いなしに、私が7時17分の電車に 乗らないといけないのに、この人は偶然を装って、どう考えても取り(つくろ)ったような咳払いをし、電柱に背を持たれ立ち尽くしているあたり。  とっとと私に声を掛けろと言わんばかりに主張してくる姿に面倒ごとが待ち構えているのが分かった私は、赤が背を持たれている電柱手前の角を曲がって何くわない顔をしようと思ったが、先月の事を思い出し考え直した。  先月、お店の手伝いをしていた時に、赤の自分勝手すぎる言動に嫌気をさした私は、丸一日無視をした翌日、赤は30代にも差し掛かろうとしているのに思春期の少年のような行動に出た。 「探さないでください」    店のテーブルに一枚のメモを残し1週間音信不通になり、赤が帰ってくるまで私1人で占いの店を切盛りするはめになった事を思い出してしまった。  赤を無視しても迷惑、赤から逃げ出しても迷惑。赤の面倒ごとを回避する最善を考えた末に私が進む道は一つしかなかった。
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