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彼が天機で培ってきた友情も、多くが修復不能になってしまうかもしれない……。
そんな憂思は口にせず、黙々とヘドロを掬っていると、飛行機雲がモクモクと僕達を追い越して行った。
額を流れ、もう二度と戻ってこなかった汗は、まだ夏の匂いがした。
クライム・Bが寄越す、六時の合図を待ってから、スコップを置くと、カレーライスの香がした。
花屋は、クライム・Bの住居も兼ねていた。
僕と違って中辛を平気な顔をで食べるシルエット・Qが、こちらを見た。
泣き跡で、顔は文字通りぐちゃぐちゃだったが、それでも夕日が反射すると美しい。
夕日が美しいのか、と思ったが、実は、コントラストが美しいのだ。
これから沈む夕日と、昼頃は沈み込み、夕方の作業で明るさを少しずつ取り戻すシルエット・Qの対比なのだ。
「今日は、オルゴールと腕時計と幾つかの鉄くずが採れた。ところで、今日はよく採れた方かい?」
乱切りの具材を頬張りながら、彼は一つ尋ねた。
僕は直ぐにオルゴールの蓋を、綺麗を保っていた右手で慎重に開けた。葉桜の隙間に蒼空が覗く様に、少し開けただけで黄金が反射した。
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