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「それぞれに事情があるってのがぁ、とどのつまりだが、花屋、ケーキ屋は自分の置かれた環境を愚痴ってはいけないね」
僕達は真面目な話をするクライム・Bを、随分と珍奇な眼で見ていた。アイスは少し溶け、指がくっついてしまった。
扇風機のことを思い出し、叫びそうになった。僕がいなくなってから、感覚は鈍化してきている気がする。
早く指を見つけないと、孤独が薄れる、なんて云う、恐ろしいことに成ってしまう。
「僕達が空っ方じゃなければ、この話を聞いたとき、もっと大人に近付けられただろうね」
と、澄まして言ってみたが、シルエット・Qはアイスに夢中だった。
あの話が、不器用な花屋の店主の寂しい愚痴だと云うことを、空っ方の僕達が知る由もなかった。
九月四日は、大安だった。しかし、秋雨だった。短くなった人差し指が痛かった。
学校に休みの連絡をして、校門の直前で引き返して、病院に行くと、もう半日が終わっていた。雨の日は、既に半分ないような物なので、九月四日は零になった。
"遺痛"、と書かれた診断書を持って花屋に入る。
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