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普段のクライム・Bは、シャッターを締め切り――それが花屋としては悍ましい異常なのだが――、バックヤードで寝ているのだが、今日は違った。
シャッターを開け、花束を通に出し、豪快に水遣りをしていた。
「行ってきたよ、病院。これ、診断書。"遺痛"、って云う失った部分が痛み出す病気らしい。なんらかの兆しだと思う。凶兆じゃなければないほど、良い」
「で、約束通り、俺の症状のことも診てもらった?」
「私は占い師ではありませんって、一蹴されちゃった。頭の病気を疑われないだけよかった」
実を言うと、面倒くさかったので訊いていない。
バックヤードに入れてもらうと、中はとても片付いていた。古い物がなくなっていた。
周りの人が、長雨にマイナスの溜息を吐く間、クライム・Bと云う男は、感嘆の溜息を吐き、彼の商いに精を出すらしい。
彼は菌類に近い人類でも、虹に憧れたナメクジでもなく、ただ単に癖の強い男なのだ。
「さっき昼寝をして、また同じ夢を見たぜぇ。シルエット・Q君が入水自殺する夢。本当に健康上問題ないって医者に言われたんだな?」
「夢のせいで大病に発展した事例は未だないって」
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