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シルエット・Qは暫く見ない内に長く育った影法師を見ながら――空っ方なので、単に下を向いたまましか歩けないだけかもしれない――、何事もなく帰路につこうとした。
「待ってくれ、君の耳の後ろのこれはなんだい?」
そこを更に僕は食い止める。
「ホクロみたいな物があるんだ。あ!これはマズい。非常にマズい。これ、熱中症の兆しだ。今は黒いけれど、茶色くなったら……君も早く、一刻を争わなくっちゃ!」
適当な言葉を並べ、僕はシルエット・Qを花屋へ連れて行くことに成功した。
もし彼が熱中症の行を本気で信じていたなら、優しい言葉を掛けまくり、保冷剤を好きなだけあげよう。
しかしまだ、僕の目的を達成するまで、油を絶やさないように努めないといけない。花屋の主人は、かなり曲者なのだ。
ジグソー・P、男、享年十二歳、奈釣ヶ浜の海水浴場での海難事故で溺死。水死体は見つかっていない。
僕との関係性は希薄。クラスメートではあるが、仲は良くない。悪い訳でもない。今年初めて同じクラスになったから、どんな信条を持っていたかは分からない。
そしてそれは、シルエット・Qだって同じなはずだ。
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