夏目カリギュラ

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 この夏に、僕が知らない関係性を築いたのだろうか?  "俺の傍で死んだ"、と云う言葉の真意も気になる。    これは、僕が僕を探す、空っ方な(ものがたり)だ。  「……らっしゃい。どれも五百円」  声だけ聞こえる。花屋の主人は今日もやる気がない。バックヤードで寝ているのだろう。  店名が"花屋"の時点で、道行く他人も目を逸らすが、仕方がない。  店内は意外と綺麗で、花束しか売られていない。  取り敢えず、どれもカラフルに飾りつけたようで、同じ作品は一つとしてない。協調性もない。  「おじさん、沼、見ていくね」  "沼"のことはあまり公に出来ないので、必要最小限の声を心がける。  「お、コラム・Nじゃぁねぇか、その声は。いや、待て。動くなぁそこをぉぉ、いや、動けよぉ前に三歩きっかりだぞ?」  僕達は言われた通り、前に三歩だけ進んだ。ガーベラの花弁が鼻先を擽った。  「二人いるなぁ〜、足音的に。で、沼が見たい、と……。OK、特大のスコップを持って、店の裏でまってるぜぇ」  寝起きの声は随分ご機嫌になった。  カラスの声の時報が四時を告げた。
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