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「理解が追い付かないかもしれないが、この沼は無限なんだ。どんなサイズの物でも入るし……」
「――入るし、……入る。まぁそれは御伽噺を信じすぎた奴の妄言だ。なぁ、コラム、シルエット・Q君を誂うんじゃぁない。これから仲良くなるんだからよぉ」
夏の延長線が、遥か遠くの入道雲まで伸びていた。隣町は多分、雨だ。
「確かに、お前の母親は、来たぜぇ。八月二十九日に。防犯カメラが言っている」
九月二日、僕は管理室で映像を見せてもらっている。
二十九日の客は僕の母親だけだった。
しかし、花束は買わず、カメラの視界から出ていった。
「確かに、母だ。見て!袋を持っている。最後の晩餐で、ユダが銀貨の入った袋を手に入れたときくらい、後生大事に掴んでいる。この袋の中に僕が……僕の指が入っている」
記念と書いてサービスだ、と、クライム・Bは花束を僕に渡した。驚くほど中で根を張っていた。
「空っ方のお前が、目標を見つけたんだ。今日は記念日だ。ついでに、その根っこが特徴的な植物は、ハミダシ草。覚えておくと、いい」
髪をぐちゃぐちゃにまとめ上げ、僕をバックヤードに案内する。
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