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「雪見。夢を見たのか」
思ったより早く、住職はやってきた。
「はい…」
なにから話そう。住職は俺の目の前に座る。
「俺が、借金の肩代わりをした、そいつの両親が息子を探してるってテレビに出てました。息子は、家族になにも説明しないで、家を出ました。実は、北海道に行った時に、俺そいつに会ったんです…。もう2度と家に帰るなと約束しました。でも、夢では帰りそうな雰囲気でした。俺が、あれだけ言ったのに…」
「…雪見は、彼を救いたいのか?」
「救う…?」
「最悪な事態を避けて、幸せに暮らしてほしいのか」
「幸せ…」
それは、北海道に行った時に考えたことだ。
「雪見の家族をめちゃくちゃにしたはずだが?」
「…それ、は、そうですが…夢を見続けてしまうから」
「夢を見ることは害ではない。雪見が彼のことを心配しているから見たのかもしれない」
「心配なんて…」
「している。救いたいと考えている。だから、ヤクザに受け渡ししていない」
「…そ、それは」
「雪見は、なにもすることはない。それに、彼を救うことなんてできない」
「え」
「忠告すら聞けない、自己中心的な人間だからだ。自分を過信してる。雪見の話は、通じていない」
「そんな…」
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