この恋、5cm差。

もし、身長があと5センチでも高ければ君の彼氏になれたかな？

僕の身長は165センチ、特別低いって訳でもないけど平均身長よりは低いし、高くはない。
今日の休み時間、女子の集団から「彼氏にするなら、身長は170センチはほしい」とか、「身長差はある方がいいよね、10センチくらい」とか聞こえてきた。その集団の中には君もいた。やっぱり、君も背の高い人がいいよね？

せめて、あと5センチ伸びたら…。あー、
「もっと、背が高かったらなー。」
誰もいなくなった放課後の教室で独り言のように言い放つ。
「そのままでも、いいんじゃない？」
突然、君がやって来た。聞かれてたかもしれない、情けない。僕の前までやって来て止まった君は、僕の目を正面から真っ直ぐ見つめた。
「だって、こうやってフィーリング感じられるでしょ？目線が重なる。」
君はお互いの顔を交互に指差して笑った。僕もつられて笑う。
「それも、そうかも。」
「でしょ？」
「もしかして、今日の話気にしてるの？案外可愛とこあるんだね。」
「別に気にしてないし。可愛くなんか。」
「ふぅん、まあいいけど。」
そういって歩き出した君に続いて教室を出る。
「君の方がよっぽど可愛いよ。」
君に聞こえないように、僕はそう呟いた。

憂鬱だった『さっき』がちょっと特別な『今』に変わった。
5センチ差の恋も悪くない。