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ゲートの中は、とんがり帽子のような円錐形の空間が広がっていた。深海だが酸素がある世界だ。
さっそく、納品を済ませたレイヤに、ユンカースの知り合いの看守が近づいてきた。
『レイヤ姫、お初にお目にかかります。看守のアビゲイルです』
年の頃は、地球の地上時間で212歳。地上でいう、健康的な青年の風貌。長身のアビゲイルは引き締まった身体をし、俗にいうイケメンだった。
挨拶を終えたアビゲイルは、レイヤに深々と頭を下げた。この世界の平均寿命は、約1000年から1200年。慈愛に満ち溢れた世界にストレスを感じることはなく、あらゆる病気も克服している。3次元に存在する人間のように肉体を持たないから怪我を負うこともない。地底世界は5次元空間だった。よって、3次元に時間軸をプラスした地表の人間世界の常識は、なにもかも当てはまらなかった。ちなみにレイヤの齢は地表時間で70歳と、かなり若いぶりに入る。
そして、この地底世界は王国制だった。だが、かつて地上にあった中世のような封建制度ではない。皆が互いを思い合い、すべてのものを育みあっている。子どもを育てるのもそのひとつだ。皆から慕われている王はそれらを見守る存在だった。
それに、仕事は義務ではない、強要されることもない。だが、皆、義務的に1日4時間ほどの労働奉仕をしている。けれど、仕事をしたからといっても報酬は発生しないが、それなりの対価はある。物々交換もあるようだ。というのも、この世界には紙幣制度がなかった。ゆえに、税金で苦しむことも、支払いに追われることもなかった。その上、大規模な政治も宗教も存在しない。そもそも地底の住人には、そういう観念がない。とうの昔に、そのような原始的な制度は終わりを告げていた。
好きこともできる社会だ。ダンスや唄を歌うのが好きな者、絵を描くのが好き者、スポーツが好きな者、車いじりやゲームが好きな者、釣りが好きな者。様々だ。すべてが自由意思で選択し行動できる社会だ。
食物は高度なロボットが育て収穫し料理までしてくれる。エネルギーも労働賃金もすべておいてフリーだ。かといって、堕落している者が多いかというとそうではない。各々に責任感があるからこそ、このような発展している4〜5次元の世界に魂が上昇できたのだろう。
従って、社会貢献しようとフルタイムの仕事を希望する者は多かった。
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