よんどころない事情

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 看守のアビゲイルが、あらゆる電波を通させないように解除コードを脳内で入力すると、たちまち、プライバシーが保てるようになった。  アビゲイルが、ベサメムーチョとレイヤに解除できたと目で合図する。 『それでレイヤ姫、どのような話なのですか? わたくしにも知ってることとそうでないことがありますので、もしもお役に立てなくても、お気を悪くしないでいただけたら幸いかと』  それを聞き、こめかみに指先をあてていたレイヤが、一呼吸おいてから話しだした。 『はい、単刀直入に申します。──私を地上に転移させて欲しいのです』 『は? それは、()なることを。それなら、わたくしに頼まなくても、許可をとって船で行くか、もしくは、テレポテーションルームに行けば良いことなのでは?』 『そうですね、それが普通の考えなのですが……、今は色々あって、おそらく、あと10年ぐらいは許可がおりないと思うのです。でも、私はすぐにでも地上に行きたいのです』 『まあ、理由はどうであれ、そういうことなら、わたくしには何もできることはありませんね』 『いえ、ベサメムーチョ博士は遺伝子転移の第一人者として名高い方。それで、今回こちらにお伺いした次第なのです』 『ん? では、わたくしに何を求めようとしているのですか?』 『もう、船で行くことと、このままの姿でのテレポテーションは、間違いなく許可がおりないので諦めました。ですが、ベサメムーチョ博士なら、亡くなってまもない人間になら、他者のエネルギー魂を注入して生き返らせれると、聞いたもので』
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