よんどころない事情

14/28
前へ
/260ページ
次へ
『フッ、よく調べていること。それに、わたくしの趣向までも…ウフッ。しかし、わたくしは、今は囚われの身。いくらそれができたとしても、どうにもならないですわぁ~』 『博士のその口ぶりだと、ここから出られれば、なんとかなるということですよね?』 『フッ、刑に服さないと、ここからは出られませんから、どうか諦めてください』 『いえ、確か、博士の研究室へ赴いて、あることをすれば、ここからでも地上に転移できるのでは?』 『それを、姫がすると言うのですか?』 『はい、私もアカデミーで遺伝子工学の基礎は学びましたから、少しは博士のお役に立てるかと』 『なるほど、姫は、わたくしの脱獄のお手伝いをしてくれようしているのですね。でも、それには及びません。たとえ、わたくしが地上に転移できたとしても、二度とこの世界には戻ってこれないのですよ。それに、あんなに汚染された地球の表面なんかで暮らせば、それこそ寿命が縮まるというものですわ』 『でも、博士は地球史にすごく興味があって、世界中の遺跡を見てみたいと…それに、日本にある古墳も年月をかけてじっくりと発掘してみたいと常日頃から教え子さん達に仰っておられたようですね。それから、日本のアニメやらBLには特にご興味があるとか……もしも、地上に移住できるのなら、天寿をまっとうしなくてもいいとかなんとか言っていたのでは?』 『ぬぬぬ…ほんとに、よく調べていること、感心しましたわ。ですが、いくら姫の頼みでもリスクが大き過ぎます。姫もアガルタへ戻ってこれないかも知れないのですよ。それに、もし戻ってこれたとしても、許可なく地上へ転移したことで、犯罪者になってしまいます』  アガルタとは、この地底の楽園の名。ちなみにアガルタの一番大きな都市は、シャンバラという。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

194人が本棚に入れています
本棚に追加