第 0 章

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第 0 章

 今日も燦々(さんさん)と人工の太陽が昇っている。聳え立つ山々は新緑が瑞々しく、海がキラキラと輝きさざめいている。この穏やかな地は南国の楽園のように湿気が少なく、カラッとした心地よい空気が流れている。その上、いつも決まって日が暮れる前の半時間だけ降るスコールが、大地に恵みを与え続けている。  夏がないので猛暑もなければ、冬もなく雪もない。それゆえ寒さで凍えることもない。台風も地震も起こらない。勿論、山崩れや津波も発生しない。  最先端科学と聞くと、どこか未完全な気がするのはどうしてだろう。そんな道(なか)ばの科学の力ではなく、ここは既にハイテクノロジーと自然が調和した世界。しかも、地球内部に存在する超高度な文明社会。まさに、ユートピアだ。  えっ!? お決まりの異世界では? と、思う諸君もいるだろう。おっしゃる通り、地球の内部は中心から順に核、マントル、地殻の3層構造になっているはず。そして、地球の中心部の温度は5,000℃以上の高温の鉄の固まりでもあると。確か、学校でそう習った記憶がある。  そう、それが現在の地球上での一般常識かもしれない。  あくまでも、現在は、だが……
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