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「ふっ、なら、やってごらんなさい」
ベサメムーチョがトカゲ女を挑発する。
物理学者である女教授からレプティリアンに変身した菅野美緒は、天井に頭をつけた状態から、近くにいる人間に襲いかかろうとした。その人間とは、宇宙科学者の金子だった。金子は驚きのあまり膝の上に置いていたノート型パソコンを床に落とし腰を抜かしていた。レプティリアンに扮した菅野美緒は、すぐさま金子の頭をかぶりつこうと大きく口を開こうとする。だが、なぜか身体がピクリとも動かなかった。
「うっ、ぅぅ……なに!? おまえ、私になにをした?」
「あなた方、4次元に存在するトカゲがわたくしに立ち向かおうなんて100万年、早いわよ。さあ、このまま冷凍することもできてよ」
「くそーっ! なぜ、アガルタ人がここにいる? そもそも、人間に憑依したって意味がわかんねーだろ!?」
「だから、100万年早いっていってるのよ。さあ、どうしようかしら…?」
「わ、わかった、私が悪かった。決して、こいらに危害を加えるつもりは、これぽっちもなかったんだ。ほんとうだ、信じてくれ。私は、今の人間社会に満足してるんだ」
「それで、人間を今までどれくらい食べたの? あっ、正直に答えないと、あなたの周りにだけ氷点下にすることもできてよ。あなた達、爬虫類は寒さにかなり弱いんでしょ?」
「そんなこと、されたら死んでしまうじゃないか?」
「だから、どれぐらい食べたの?」
「……週1のペースだ」
「そう、ところで、あなた今いくつ?」
「120だ」
「じゃあ、今までに、6257人も食べたのね。で、そのうち子供は何人いたの?」
「…ほとんどだ」
このとき、隣で腰を抜かしていた金子が、正気を取り戻し、恐る恐る起き上がってレプティリアンに近づいた。
「美緒! 嘘だろ!? なんでおまえがトカゲの怪獣になってるんだ!」
「フンッ、気安く私に話しかけるんじゃないわよ、この下等種族が! どうせ近いうちに、おまえも食そうと考えてたんだ。お前はその辺の人間よりも頭がキレるから、交配してハイブリッド種でも作ろうと思っていたんだが、お前の身体と精神はあまりにも弱すぎる。だから、そろそろ始末しようと考えてたところだったんだよ!」
このレプティリアンの言葉を耳にしたベサメムーチョが金子に話しかけた。
「あらあら、奥様がいるというのに、金子さんも罪におけないわね。でも、あなた、初めて見たときから思ってたんだけど、すごく女難の相がでてるわよ」
「……」
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