三位一体

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「おおー! なんという斬新な発想だ! いや、これが大宇宙の真理なのか!」  またしても宗教学者の小野寺が感嘆の声を上げた。他のメンバー達もこぞって称嘆(しょうたん)する。 「フッフフ、一を聞いて百を知る、か…まあ、あなたは達はそれなりの知識がおありだろうから、わたくしのこの話を理解できたのね、ありがとう。でもね、この話についてこれてない読者さん達も少なからずいてるのよ。ただのファンタジーやオカルトの域を超えない小説だと思っているはずよ」 「へ!? 読者さん…と、小説…ですか!?」  小首を傾げた│真愛(まいと)の妻、静香が聞いた。 「そう、このわたくし達のやりとりを活字で読んでいる読者さん達よ」 「……」「……」…………  それを聞いた皆の脳が一時停止する。よくわからないと、みんなが一斉にベサメムーチョに懐疑的な目を向けた。 「あら、みなさん困惑していますの? ホッホホホ。では、説明しますわね。この世界は、無限ループを繰り返しているの。永劫回帰(えいごうかいき)と、ニーチェも説いてたわよね。すべての経験が一回限りの世界観じゃなく、超人的な意思によってある瞬間とまったく同じ瞬間を次々に枝分かれして、永劫的に繰り返すことをいうのよね。そして、何者かが絶え間なく、そのすべての事柄を観察し、記憶もしている。わたくし達のこのやりとりも、すべてね」 「それと、先程、言われた読者さんと小説と、どう関係があるの?」  静香がしつこく問うた。 「今現在、わたくし達は、2次元の小説の中にいるかもしれないし、そうでないかもしれない。もしも前者なら、この物語を3次元の誰かが読んでいるかもしれないし、そうでないかもしれない。次元のループを誰もが体験してるっていうこと。あなた達も、よく異次元に行ったりして、ループを体感してるでしょ?」 「……?」「……?」「……?」「……?」「……?」「……?」「……?」「……?」 「フッ、わからない? いいわ、教えてあげる。──夢よ! 寝てるとき、いつも見てるわよね? 色んな未来と過去にループしてるでしょ。少なくとも無意識のなかで夢を見ている時は、今よりも高次なところに意識を飛ばしてるってことなの。もっというなら、各々(おのおの)の意識のあり方によって居てる次元が決まっちゃうのよ」
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