ひきだしのおくに。

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　なんでタイマーかけてカップ麺作らないのかって？そりゃあれだ、タイマーの鳴る音が嫌いだからだ。
　あと鳴ったあとで止めにいかなきゃいけないのもめんどくせえ。急かされてるようでなんかもう腹も立つし、だったら適当に三分くらい過ぎたら蓋開けて食べる、でいいじゃねえかと思うようになってな。多少固かったり伸びてたりしても全然気にしないタイプだったし。
　その三分も、正確に時計で測るようなことはしない。俺がよく買うカップ麺は三分のものが多くて、何度も食べるうちに三分くらいってのが大体わかるようになってたしな。
　だからいつものように、三分くらい過ぎた気がしたかな、で蓋を開けて中身を食べ始めたんだ。ところが。

――変だなあ。

　さっきも言ったが、ちょっと麺がのびてるくらいじゃ気にしないし気づかない俺だ。
　なのにその日は、麺がでろんでろんにのびてた。
　お前さん、カップ麺は食べる方か？作家だから家にいることが多いよな、だったら一人でそういう飯も食うだろ？――ああやっぱり。じゃあ想像がつくと思う。
　最近のカップ麺って結構優秀で、ちょっと食べるのが遅くなったくらいじゃそうそうデロデロにのびたりしないんだよ。少し柔らかくなっちゃう時はあるけどその程度。だから食べるのがゆっくりな人とか、忙しくてお湯入れてから時間たっちゃった人でもそんなにのびることはないというか。
　なのにその日の、麺ののび具合は異常だった。まるで俺がお湯を入れたまま、一時間くらいうたた寝でもしてたかのように。

――たまたま、そういう麺だったのかな？

　俺は時計を見たけど、そもそもお湯を入れた時間を見てなかったので意味はなかった。少し眠くなったような気がしていたし、うっかりちょこっとうたた寝でもしたのかもしれない。全然、そんな感覚はなかったけど。
　疑問におもいながら、その日はのびちゃったカップ麺を食べてお昼ご飯を終えた。それだけ。他に特別おかしなことが起きたとかそういうのはなかった。
　でもな。
　こういうことが、繰り返されるようになったんだよ。一週間に一度か二度ずつ。
　俺はお昼はカップ麺率が高かったから、余計気づきやすかったのかもしれない。お湯入れたカップ麺をテーブルの上に持っていって、三分くらいスマホでも見てようと思って――で、三分くらい過ぎたなと思ってカップ麺を食べようとすると、麺が異様にのびてるわけ。
　さすがに、途中でこれは何か変だなと思ったんだよ。俺、実は気づかない間に気絶でもしてんじゃないかなって。