ひきだしのおくに。

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 でも本当にやべえのはここからなんだ。どうやら俺は一時間の間にどこかに出かけて、手を洗って、そのあともう一度カップ麺の前に座ってるらしいんだよ。  出かけた俺が手を洗うとしたら、キッチンじゃなくて洗面所だろう。ある日俺は、“目覚めた”あとで洗面所を見た。で、変なものを見つけたんだ。  なんか、赤いものが落ちてるんだ。まるで血の雫みたいに、一滴。  本当に少ない量だから、それが血だなんて断言できなかった。でも俺は急に怖くなったんだ。ひょっとしたら俺はあの一時間の間に何者かに体を乗っ取られて、とんでもないことをしてるんじゃないかと思ってな。  そしてもう一つ気づいた。――俺がいつも飯を食うリビング。そのテレビ台の横に、貴重品とかをしまっておく小さなタンスがある。上から四つ引き出しがあるんだが、その一番下の段の取っ手が濡れてるんだよ。  まるで手を洗って湿った手で引き出しを開け閉めしたみたいにな。 ――ここに、何かを入れた?あるいは、出したのか?  嫌な予感しか、しなかった。  俺がお昼の時間の記憶と意識を飛ばすようになってから、なんだかんだ三か月くらい過ぎちまってる。でもってこの引き出しのうち一番下の段は全然使ってなくて、ここ半年くらい開けた記憶がなかったんだよな。  ここに自分は、何かをしまったのか?それも血がついているようなものを?いや、あの赤いものが血なのかインクなのか結局わからないままではあるが。 ――確かめないと。  俺は意を決して、その引き出しに手をかけた。そして、思い切り引っ張って――。 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」  何が、入ってたと思う?  爪なんだよ。大量の、血がついた爪がびっしりと。  まるで、生きた人間の指から無理やり剥がしてきたみたいな血まみれの爪。形と大きさからして多分、手じゃなくて足の爪なんだと思う。それも、どれもこれも足の親指の爪ばっかりなんだ。  俺は怖くなって引き出しをしめた。自分は、一体何をしていたっていうんだろう。三か月間、まさかどこかに出かけてこの爪を集めていたとでもいうのだろうか? ――怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!  結局、その話は誰にもできなかった。つか、一人暮らしだし、恋人もいねえし、そんな相談できる友達いねえし。
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