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小川先生の声を背に俺も保健室から出た。
廊下をびっこ引きながら歩いていると、さっきの放送を聴いた連中が、我先にと押し合いながら、体育館の方へ走っていく。
だが、その人数は思ったより少ねー。
他の連中は校舎内から逃げちまったのか、それとも…。
家庭科室だった所まで辿り着くと、見覚えのある小せー背中がうずくまっていた。
「山村」
近くまで行って声を掛けると、山村が振り返った。
その顔は涙を流し鼻水まで垂らしていて、せっかくの可愛い童顔が台無しになっていた。
「保ー!!」
山村は勢いよく立ち上がると俺の足にしがみついた。
手当された怪我が鈍く痛むが、そんなことより…家庭科室の中は化学室同様、瓦礫で埋まっていた。
もうその惨状を目にしただけで、料理部の連中と飯を食っていた奴等がどうなったか察しがついた。
「皆が…っ!皆があー…っ!」
山村は俺にしがみついたまま泣きじゃくっている。
その身体が震えているのは、恐怖のせいだけじゃねーのは、解る。
「山村、みなまで言わなくて良い」
俺は屈んで山村の身体を抱きしめ返した。
「うっ…うっ…うわあーんっ!!」
山村は声を上げて泣き続けた。
俺は何故、こんな事になったのか、色々あり過ぎて頭が思うように回らなかった。
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