13人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「俺は…っ!俺だけは死にたくない…っ!!」
混乱した野郎が香澄に向かって殴り掛かってきたのだ。
「キャアッ?!」
「香澄っ!!」
怪我してなけりゃー野郎をボコボコにしてやるところだが、今の俺は香澄を庇うのが精一杯だ。
「千夜くん!諸橋さん!」
「保ーっ!香澄ちゃんっ!」
鈴木と山村が叫び声を上げる中、俺は香澄を咄嗟に背に庇い、野郎の攻撃をガードしようとした。
「ぐはあっ?!」
悲鳴を上げたのは、俺でも香澄でもなかった。
ドサッ!と音を立てて、香澄を殴ろうとしていた野郎が地面に倒れる。
「いくらパニックに陥っているからって、女の子に手を上げるのは、感心しないな」
博士が一気に間合いを詰めたかと思うと、野郎の鳩尾にパンチを放ったのだった。
それを視認出来たのは俺だけだった。
「えっ…?」
「あれー?男の人、倒れちゃったー」
「動かないですね。頭でも打ったのでしょうか」
皆、不思議がっているが、俺は博士が野郎を殴った瞬間、只ならねーモンを感じていた。
「博士、あんたは一体…?」
「千夜くん、君も只の高校生じゃないでしょ?」
博士は俺に耳打ちすると、何事も無かったかの様に歩き出した。
「千夜くん、私を守ろうとしてくれて、ありがとう」
後ろを振り返ると香澄が恥じらうように笑顔を見せていた。
最初のコメントを投稿しよう!