誤差の範囲と言われても 

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誰にでも、自慢出来るものってあると思う。 俺こと浜谷優希が無理矢理一つ自慢するとすれば、めちゃくちゃ素敵な幼なじみがいる事かな。 彼女じゃないけどな! それは家が隣同士の最笑(さえ)ちゃん。 名前の通りいつも笑顔で明るくて、大きな目とストレートの長い黒髪、そして170センチの長身からすらりと伸びた長い脚は嫌でも人目を引いて引いて引きまくる。 その危険な脚線美は、去年俺達が高校生になってから通学路に「脇見注意」の看板が立てられたという伝説を持っている程。 ガールズバンドを組んでてギター&ボーカルでもある。噂のロングトール・サエーとは彼女の事だ。 だから俺は必ずいつもの時間に家を出る。絶対に遅刻などしない、してたまるか。 だって最笑ちゃんと一緒に登校出来るんだから! まるで天使の草笛みたいなヘビロテしたいハイトーンクリスタルボイスで 「優希くんおっはよー!」 とか言われて、キャッキャッウフフと登校して羨望の眼差しを浴びる、それが彼女の隣の家に生まれた俺だけに許された特権だ。家ガチャ大当たりじゃないか。彼女じゃないけどな! 「あっ最笑ちゃん、髪に芋けんぴ付いてる!」 「えっ嘘?なんか変だと思ってた!」 こういう天然な所も彼女の魅力と言える。 いや、魅力に違いない。 しかしそんな俺の密かな幸せは、突然終わりを迎えたのである。
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