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気にしないようにしてたけど、本当はずっと気になっていたんだ。俺は座高の魔王、あるいは座高で雑魚なんじゃないかと。
こっそり保健の先生に尋ねてみる。
「ああ、君はだいたい平均値だけど、座高は学年でも上位の優秀な成績だね。掲示板に貼り出すか」
未来ある少年を更生できなくするつもりですか先生?
身体測定なのに精神攻撃を受けるとは何て事だ。
しかし俺には傷ついている暇はない。
慰めてくれる優しい人もない。
ドン!ドン!ドン!ドン!
ほら、聞こえるだろう?
ドン!ドン!ドン!ドン!
嫌なリズムで近づいて来る足音は怒りの重低音。
今は攻撃に備えるのだ。
そうさ、奴は俺を探しているのさ。
怒りの銃弾をぶちまける為になあ!
「優希くんのばかあああああ!」
「八つ当たり来たあああああ!」
「もーもーもーもーう!
やだやだやーだーやーだー!」
おお、仔牛を乗せてヤダヤダと荷馬車が揺れているっ!もしも翼があったならすぐにここから逃げるのに。
「今年も3センチ伸びてたああああ!」
何、3センチ?俺と同じ……じゃない!
俺が縮んだだけ最笑ちゃんが伸びたってこと?
返せ、返してくれ俺の股下!
「きっとこのまま永遠に伸び続けるのねっ!
そうよ私は悪魔の力を身に付けたノビルマン!ノビルウイーングっ!」
全てを捨てて戦うのかー?
そんな俺のツッコミも虚しく最笑ちゃんは廊下を駆け抜けて行く。
その後ろ姿のかっこよさ。うっわ脚長げえ。
違うよ、悪魔の力を身につけてしまったかもしれないのは俺の方だ。このまま座高がニョキニョキ伸び続けたら将来は足長おじさんならぬ胴長おじさん。お話にもなりゃしない。
これからも最笑ちゃんとは仲良しでいたい。
だからこそ、誰も知らない知られちゃいけない。
俺の……
「お前はいいなあ浜谷」
広石がぬっと現れて俺の肩をぽんと叩いた。
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