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「ねえ、おにいちゃん。 まみの『かれし』になってくれる?」
「ん〜? そうだな、茉美ちゃんがもっと大きく、──背がお兄ちゃんの肩くらいまで来たらね」
幼い私の告白に、お隣に住む高校生の崇史くんは優しい笑顔でそう言ってくれた。
それが私の目標だったの。
大きくなったら、背が伸びたらお兄ちゃんは私を見てくれる。単なる隣の子としてじゃなく。
ただ、それだけが。
十歳以上も年の離れた、幼馴染とも呼べない二人。
当たり前だけど生活リズムも全然違うから、一緒に遊ぶどころか言葉を交わすことさえあんまりなかった。
崇史くんにとって私は、たまに見掛けたら話す程度の隣に住んでる小さい女の子。別に興味なんかない、気に留めることもない存在だった。
でも私には違ったのよ。
ずっと、物心ついた頃から特別な存在だった。好きだった。本気で。
大きくなったら。背が伸びたら。
──キレイな大人、になったらきっと。
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