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崇史くんはお父さんもお母さんも大きい方で、高校卒業する頃にはもう百八十センチだって聞いた。
つまり肩までなら百六十はいるんだ。
うちはお父さんは普通だけどお母さんは平均より高いの。だからきっと私も百六十なら行けると思う。
だけど運命に任せる気はなかったから、「背が伸びる」って言われてることはとりあえず試したのよ。
もちろんお金が掛かることは簡単には無理だったけど、例えば早く寝る、とか自分の努力でできることは必ず。
睡眠は長さもだけど「いつ寝るか」が大事らしいから。成長ホルモンって寝てる間に出るんだよね?
だからもう夜十時には寝るようにしてたの。これ結構大変だったよ!
お母さんにも「カルシウムは背が伸びるんだって! 牛乳とかチーズとか、あと小魚! できるだけ出してよ〜」って頼んだりしてたわ。
あとはもちろんタンパク質よね。適度な運動も!
努力が実ったのか元々そういう体質だったのかはわからないけど、私は中学時代にはもう百六十はあったわ。
今は百六十三。百八十センチの彼の横に並ぶにはバッチリよ。
きっとお兄ちゃんは、……崇史くんは応えてくれるってそれだけ夢見て頑張って来たの。
信じてた。ううん、信じたかった、んだ。本当は自分でもわかってる。
高校生になった私はあの頃より背も伸びたし、比較ならキレイになったわ。
もう五歳の子どもじゃないんだから当然よね。
あの崇史くんの言葉は、単なるその場しのぎだった。
結論を先延ばしするための口先だけの、今なら私だって普通に使うような。
それくらい、もちろん理解してる。
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