触れれば溶けると知っていたなら

1/2
前へ
/2ページ
次へ

触れれば溶けると知っていたなら

 火照る肌を夜風が掠め、少しずつ気分が落ち着いてくる。  それでいて、伸ばした指先が薄い唇を掠めたときの感触は、少しも消えてくれない。  あなたに触れたときに覚えた身を焦がすような感覚は、決して届かない星空に手を伸ばすときのそれによく似ていた。  触れれば溶けると知っていたなら、きっと私は手を伸ばさなかった。  叶わない恋は叶わないままだから美しいのだと、……ああ、どうして誰も私に教えてくれなかったんだろう。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加