触れれば溶けると知っていたなら

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触れれば溶けると知っていたなら

 火照る肌を夜風が掠め、少しずつ気分が落ち着いてくる。  それでいて、伸ばした指先が薄い唇を掠めたときの感触は、少しも消えてくれない。  あなたに触れたときに覚えた身を焦がすような感覚は、決して届かない星空に手を伸ばすときのそれによく似ていた。  触れれば溶けると知っていたなら、きっと私は手を伸ばさなかった。  叶わない恋は叶わないままだから美しいのだと、……ああ、どうして誰も私に教えてくれなかったんだろう。
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