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 一瞬で、運転席からの景色が、石畳の道にレンガ作りの家が並んでいる光景に変わった。  ここは、街? なんだかヨーロッパの街並みに似ている。行ったことないけど。  あ、人間もいる。奇声を上げ、みんな同じ方向へ走っていく。お祭りかな? 「オイデヤス」  ニャポネの言葉に皆が走ってきた方を見る。そこにいたのは、一つ目の大男。豚顔のデブ。鎧を着た爬虫類。他、グロテスクな面々。  ま、魔物だ……。それも車で襲われた時とは比べ物にならない数だ。  まさかこの軍勢と戦う気? いくら妖術が使えるからってムリゲーじゃないの?  車から降りたニャポネは、僕が先程あげたお土産を地面に並べた。そして何やら呪文を唱えると、お土産に光が宿った。  次の瞬間、一気に巨大化。更に意思を持ったように動き出す。 「タノンマスエ」  北海道の木彫り熊が。福島の赤べこが。東京の犬張子が。岐阜のさるぼぼが。愛知の招き猫が魔物相手に暴れだす。  なんだこの光景。シュール過ぎるでしょ。 「キバリヤス。マクマク、ベニブル、ワンマル、ポッペ、ナーゴ」  もう名前付けたんだ。  五体の芸品の活躍により、魔物の群れは徐々に数を減らしていく。こりゃ楽勝だね。  と思った僕が甘かった。  遠くの空から、山のように巨大な何かが迫り来る。  キリンのように長い首を何本も揺らし、コウモリのような翼を広げた、まるまる太ったトカゲ。  あ、あれはキングギド……いや、多頭ドラゴン。間違いなくボスだ。  あんなのに暴れられたら街は壊滅。僕の愛車だって無事じゃすまない。攻芸品達もビビって元の置物に戻ってしまったし。 「イケナイ!」  高下駄を脱ぎ捨て、五体の下に走るニャポネ。いやそんなのいいから早くここから逃げないと。  僕は咄嗟にエンジンをかけた。あ、ダメだ。バッテリー上がってたんだった……、と思いきやエンジンがかかった。なんで?  もしやあの時、ニャポネの雷で充電された? んな馬鹿な。とにかくこれで逃げれるぞ。  ……逃げる? ニャポネを置いて?  妖術使いとは言え、ニャポネは女性だ。  女性を見捨てちゃ、日本男児が廃る!  僕はキャンピングカーを急発進させ、五体の置物を抱えドラゴンの炎から逃げるニャポネの下に向かった。 「ニャポネ乗って!」 「! ミツグノイエ、ウゴクデアリンス?」  ニャポネを後ろに乗せるとアクセルをベタ踏みし、魔物の群れに突っ込んだ。 「ぬおおおお!」  もともとヒビが入っていたせいで、魔物と激突した衝撃でフロントガラスは完全に割れ、その破片が僕を襲う。 「ミツグ! ムチャハアキマヘンエ!」 「それはお互いさま! 危険を顧みずお土産を拾いに行く方が無茶ですよ!」 「……ミツグガクレタ、ダイジナモノデアリンス」  大事な物を戦闘に使うのかと野暮なツッコミは置いといて、普通に照れくさいね。 「ミツグ、ヤツヲヒキツケテ、マチカラハナレテオクンナマシ」 「かしこまり!」
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